2023.5.26
何かの楽器を接頭語に持つ五重奏曲と言うと、私の中ではシューベルトの「鱒」がまず最初に出てきます。ピアノ五重奏曲で、普通の「ピアノ五重奏」と呼ばれる編成が一般的に「ピアノ+弦楽四重奏」であるのに対し、「ピアノ+ヴァイオリン+ヴィオラ+チェロ+コントラバス」という編成なのです。
基本的に1+4の五重奏の場合、4は弦楽四重奏になるというのは、太陽が地球の周りを回っている事と同じくらい一般的です。
しかし、シューベルトは敢えてそうはせず、低音を拡張した代わりにある一定の確率された響きを手放したにも関わらず、この上なく瑞々しく魅力的な傑作を書き上げたのです。
そんな五重奏を書いてみたいなぁと思い続けて、はや四半世紀。ピアノ五重奏に着手するより前に、シューベルトの編成の応用を試す機会が巡ってきたではありませんか。
という事で、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという五重奏です。
そもそも弦楽四重奏という確固たる編成を捨てているので (次はフルート+弦楽四重奏+コントラバスの「フルート六重奏曲」にしようと心に決めるくらい、決して書き易いとは言えませんでした)、特にチェロパートが普段よりも多様な役割を担う事になり、それに順じてヴィオラやヴァイオリンも順当に担う役目が増えることになりました。
コントラバスにもある程度ソリスティックな瞬間は書きたいですし、結果的に各楽器の負担は一律に増えた、という事になるのでしょう。しかし、実際に奏者の皆様に譜面から音を立ち上げて頂いたのを聴いて、この試みが決して誤りではなかったと確信を持てたのです。
・第一楽章。ソナタ形式。
・第二楽章の副主題は私が小学生の頃に思い付いた旋律です。同級生がファンタジーものの創作をしようとしていると聞いて、そのプロットを聞かせてもらった私は「それの音楽を俺にやらせてくれ」と勝手に何曲か書いたっきり(多分誰にも聞かせてない)、彼女の創作はその後全く進展する事なく有耶無耶になりました。その時に書いたメロディ二つは何故か忘れないまま取ってあり、そのうちの一つです。