「森 亮平を聴け!」第一弾プログラムノート

2022221日の武蔵ホール配信コンサートのプログラムノートです。ヴァイオリンに粟津惇さん、チェロに中西哲人さんをお呼びして、私の作品を中心にプログラムを構成しました。興味のある方は動画(←リンクです)と併せてどうぞ。

 

  亮平 私は腹の痛みを持っている (直訳)
Ryohei Mori : J’ai mal à l’estomac

 オペラを観た作曲家が、帰宅後に覚えている主題でファンタジーを書くなんて事はよくあります。ミュージカルを振った作曲家が公演終了後に覚えている (気に入っている) モチーフを使って曲を書いても良いではありませんか。とやかく言われるのが嫌で詳細は書きませんが、副題として「ちよっとした引用を含むフランス風小品」と付けてある通りの作品です。
 割とフランス風が上手くいった気がしており、個人的には大変満足です。


ニコライ・カプースチン ピアノ三重奏の為のアレグロ
Nikolai Kapustin : Allegro for Piano Trio opus 155

 室内楽曲が親しまれている作曲家ほど、オーケストラの曲を見るべきだと思います。もちろん「有れば」の話ですが。この演奏会でも折に触れて取り上げているフランセや、プーランクは特にオーケストラ曲を見ると大変楽しいのです。
 ピアノ独奏にあまり興味が持てない私でも、カプースチンのピアノソロ曲に食指が動いた時期がありました。が、どこで見たのか聞いたのか分かりませんが「私の作品はジャズではなくクラシックだ」と言うような内容の発言をなさったと知ってから一気に興味が薄れてしまい、最近では敢えて聴こうと思うのは「アルトサクソフォンとオーケストラの為の協奏曲」くらいです。カプースチンの昔のオケ (というよりビックバンド) 曲とか凄く好きだったのですが。。(今でも聴けるか分かりませんが、昔は彼の公式サイトで過去作品の音源を聴くことが出来たのだ。しかも無料で)

 そんなカプースチンの室内楽に取り組むのは大好きで、これが中々に形にするのが難しい。それが楽しい。そしてまず音を並べるのも大変。(個人的に、です)
フルートとチェロとピアノの為のトリオもいつか取り上げたいと思っているものの、まだ下払さんの説得が済んでおりません。笑

 ざっくりラヴェルあたりから「ジャズ」の語法がクラシックに取り入れられるようになり、『ジャズの語法』という表現がクラシック界に跋扈する事になります。取り敢えずちょっとそう言う和音を見付けたら『ジャズの語法を用いている』と言っておけば良いので楽なのは分かるのですが、如何せん使い過ぎな印象があります。
 結局カプースチンについては「クラシックの演奏家が書かれている譜面を弾いた結果、ジャズっぽく聴こえる」という触れ込みで作品が出回っている状態がイマイチしっくり来ないんだと思うのです。こう言うと何かと噛み付いてくる方々もいるとは思いますが、バッハとモーツァルトとベートーヴェンを演奏する時に同じようなアプローチの仕方をするかという話です。カプースチンの昔のビックバンドの作品が好きだと書いたのもそう言う理由で、ちゃんと専門家が演奏しているということが何よりも良いと思ってしまいます。

 どうしてもクラシックの立場からの目線になってしまいますが、ジャズとクラシックを比較する時にどうも「楽譜の存在とアドリブの有無」だけが取り沙汰されて、それ以外の重要な事に全く目を向けられていない事が多いと言うのは、随分な傲りだと思ってしまう今日この頃です。


  亮平 ヴァイオリンソナタ
Ryohei Mori : Sonata for Violin & Piano D flat Major

『耳をすませば』を観て「ヴァイオリンをやりたい!」と言い出したのを覚えています。結果、小学生の間六年間、習わせてもらっていました。中学校に上がる段階で「学業に専念する」という理由で辞めてしまった事を今でも後悔しているのです。そのせいで、とは言いませんが、ヴァイオリンという楽器には格別の思い入れがあります。

 上京して知り合った迫田君という同級生のヴァイオリニスト (三月の『プーランクも聴け!』に登場します) が居ます。彼とは毎晩と言うと大袈裟かもしれませんが、かなりの頻度で学校から譜面を借りてきて集まっては、名前も知らないような作曲家のヴァイオリンとピアノの為の作品を初見で演奏して遊んでいました。数々のどうしようもない曲との出逢いに、稀にある大発見。
 確かアイヴズだったと思うのですが、ヴァイオリンパートに歌詞が書いてあってそれを急に歌い出した時には腸が捻じくり返るかと思うほどにツボに入ってしまったのを今でも覚えています。「フィッシャーマン。イェス!」という歌詞でした。
 当然そんな事をしていると、認知している (一度でも触った) ヴァイオリンソナタの数はかなりのものなのに、弾きたいなぁと思わせる曲の少ない事と言ったら!そこで自分が書けば良いと何故かあまり思わなかったのか、実は多楽章形式の真っ当なソナタは完成しないまま今日に至ります。

 この作品を書いた経緯はほとんど覚えていません。ある時、伊勢に滞在していた二日程で今形にしてあるほとんど全ての構想をまとめた事と、その際に第三楽章 (つまり最終楽章) にあたるテーマまで考えていた事だけは確実です。……つまり、今の状態では未完成という事になってしまうのですが、そこまで (最終楽章まで、という意) 書く気が今の所起きないのと、現状では下手に後続楽章を書くよりも、第一楽章だけにしておいても十分だと思ってから早三年程が経ちました。
 弦楽器に対してフラットの多い調を書くというのは一般的には稀なのですが、不思議なものでこの曲は最初からヴァイオリンとピアノの音で、変ニ長調を採っていたのです。一瞬たりとも移調しようなんて考えませんでしたし、冷静になるまでこの曲がフラット五つも付くような調であるということも意識していませんでした。

 今回の企画を発案した時に、粟津さんにお願いするぞと考えた次の瞬間には「粟津さんにこのソナタを弾いてもらえたら素敵だ」と思っていたので、実現して大変嬉しい限りなのです。


ナディア・ブーランジェ 三つの小品
Nadia Boulanger : Trois Pièces 

 人様の曲なので普通に楽曲に触れていこうと思います。

 一曲目は変ホ短調。私のヴァイオリンソナタで、弦楽器に変ニ長調が如何に珍しいかと書いていたのに、更にフラットを一つ増やしておりますね。ピアノが淡々と高いところで揺れていて、チェロが旋律を落としていく様子が大変印象的です。
 二曲目は半拍遅れのカノンで全体が構成されています。民謡的な主題が心地良く「小品」の名に相応しい楽曲です。チェロが先に出て、ピアノが後を追う形になっているのですが、当然ピアノは他の音も少し弾いていて、その音符がカノンとなっている声部の音よりも幾分小さく表記されており、非常に見辛いというオマケ付き。豆譜、ガイド、とか言うのですがそう言う場合は他の楽器の演奏している部分が書かれている場合が多く、下手すると「弾かなくてもいいのか?」と勘ぐってしまうのでこの書き方は出来たら今後やめて頂きたいですブーランジェ師匠。
 三曲目で、いきなり!?と思います。少なくとも私は思いました。どういうコンセプトで三曲をまとめたか分かりませんが、俺がもし教える立場で生徒がこの構成で書いて持ってきたら一言言わせてもらうと思う。そこが天才と凡人の違いなのかもしれませんね。。
 中間部には、ナディアの妹であるリリ・ブーランジェの香りを感じさせる部分もあり、結局一番ブーランジェらしいとは言える楽章です。聴き終わった頃には、脳内に「ここで、クエスチョン」と言うセリフが過ぎることでしょう。


亮平 ピアノ三重奏曲第二番 ハ長調 35:00
Ryohei Mori : Piano Trio No.2 C Major

 とにかく「春」というような上昇思考的副題が付いて然るべき勢いの楽曲です。現状で私のピアノ三重奏曲(Vn. Vc. Pf.の編成のもの)は二曲あるのですが、その第一番 (「森 亮平を聴け!」第三弾で演奏予定です) と対照的、とは言わないまでも、精神的にかなり反対側にある作品です。 雑に言ってしまえば「若い」という表現になってしまうのが痛恨の極みではあるものの、今振り返ってみればここまでのテンションを保ってよく書いたなぁと過去の自分に舌を巻いています。

 第一楽章はソナタ形式。やりたい事全部やったな!という感じです。展開部で広げすぎたのを省みてか、再現部では無理矢理第一主題と第二主題を同時に再現させています。このトリオ全曲を通して「ミ」の音に随分と固執していますが、それも狙いだったのです。楽章最後のヴァイオリンに、開放弦を逃れられないE音を何度も弾かせるのもそう。

 第二楽章はスケルツォ的な楽章で、トリオではショパン的なメロディが顔を出します。……というかショパンだという事が発覚致しました……。恐ろしい事に書いて初演して聴き返してもしばらくするまで全く気付かず、たまたまショパンのワルツを嗜む程度に弾いていたら、なんか聴いた事があるぞとなりまして……確認したら自分の書いた曲だったという大事故です。
 そのワルツも知らない曲じゃないし (本番とかでは弾いてはないけど多分練習した事もある) 当然私が剽窃したんだろうと責められても反論出来ないのですが、これは直すべきではないと判断してそのままにしてあります。……多分、ショパンも許してくれるのではないかと思う。。

 余談ですが、ショパンのチェロソナタの第二楽章の中間部の旋律が大変に美しいのです。初めてお会いしたのが恥ずかしながら大学在学中の初見の授業だったのですが、絶対聴いたほうがいいと思います。笑

 第三楽章からは曲が終わるまで止まる事なく演奏されます。粟津さんはこれ以降が全て第三楽章だと思っていたらしく、確かに切れ目がないのでそう思われても仕方ありません。
 かなりスケールの大きな盛り上がりのある第三楽章は、三部形式の緩徐楽章と言って良いのでしょう。ト長調で始まり、後半でテーマが再現される際に全く旋律の形を変えず伴奏がホ短調になります。ここでも「ミ」という事ですね。メロディは正式にはホ短調には終止せず、ヴァイオリンのカデンツァ的な経過部を挟み、第四楽章の変奏曲へと繋がります。

 第四楽章の主題は第一楽章と同じもの。恥ずかしながら循環形式でございます。(二楽章でもそのテーマは出してあるのでこれは紛れもない循環主題であります) フィナーレを含めると全部で九つの変奏が行われます。折角なので各変奏の説明も。

 第一変奏 ヴァイオリンとチェロの二重奏による変奏。かなりシンプルに「デュオにしただけ」ですが、終楽章直前のカデンツァ以外では初めてピアノが居ないままある程度の時間が経過するという部分なので、割と新鮮に聴こえるのではないでしょうか。
 第二変奏 三連符を中心にした変奏。かなり古典的な書き方をしてあります。
 第三変奏 三連符と来たら十六分音符でしょうという事で勢いそのままに駆け抜けます。この辺りからテーマの変わりようが印象的に感じるのは私だけでしょうか。メロディの扱いに関してはこの後の変奏全てに於いて「こういう変え方って良いよね」と素直に思えます。手前味噌も甚だしいですが。
 第四変奏 ずっとピアノが十六分音符を担当していましたが、今度は旋律としてヴァイオリンが細かい音符を引き継ぎます。こういう自由な変奏の仕方も好きですね。
 第五変奏 半分ふざけているような感じです。こういうのも変奏と呼んで良いというのはプーランクやフランセから学びました。
 第六変奏 大変珍しいピアノのみの時間です。弾くたびに「やっぱりピアノだけになんかしなきゃ良かった」と思います。でも、弾き始めとか結構気に入ってるので「無けりゃ良かった」とは思いません。笑
 第七変奏 接続詞的な変奏、とでも申しましょうか。雰囲気を一気に変える為に不可欠な変奏なのですが、どうしても変奏の一つとカウントしづらい変奏です。
 第八変奏 ここまで聴いて下さった方には恐らく心地良い諦めを感じさせるのではないでしょうか。個人的にはここの為にずっと演奏して来たなぁと思う所ですし、何度聴いても自分の曲ながら感動してしまう所です。恥ずかしい。
 フィナーレ テーマが二拍遅れで演奏されます。短めの交響曲に等しい演奏時間を締めくくるに相応しいエンディングの最後の最後で、第六変奏の冒頭音形 (C.E.A.F#.G)が顔を出すのも何かと感慨深いものがあります。


「森 亮平を聴け!」は全三回の構想なのですが、初回にして「聴くにも演奏するにも最も大変なプログラム」になってしまいました。昨年一年間、武蔵ホール配信コンサートに私が出演する回ほとんどで新曲を書かせて頂いて来て、常連の方々がいるとすればこれまで聴いてきた「森 亮平の作品」像との対比を楽しんで頂ければ尚の事幸いです。

武蔵ホール第一回反省

 反省と書くと、いかにも何かやらかしたかの様な印象を与えてしまうかもしれませんが、特にそういう訳ではありません。そういう訳ではないと信じたい。
 先日の武蔵ホール配信コンサートをご覧頂いた皆様、ありがとうございます。この様なご時世にも関わらずホールに駆けつけて下さった方々には何と御礼を申し上げれば良いか。。

 共演した皆様と、進藤組の皆様と、ホール自体に助けられました。……というような月並みな表現しかできない自分が何とももどかしいですが、まさにその通りで、何事も信頼が大事だなと改めて思います。もう任せておけば何とかなると手放しでいられるのは本当に幸せな事です。

 反省と言えば、コンニャクの入ったグラスを何故ピアノの上で撮影しなかったのかという事です。自分で「コンニャクの入ったグラスを」なんて言いにくいセリフを言っているにも関わらず写真を撮るのに夢中で普通にテーブルの上で撮影してしまいました。
 コニャックの言い違えとして「コジャック」「コダック」「コンタック」「パナップ」など色々考えてやはりコンニャクだろうとなり、絵になる玉コンニャク (本当は緑とオレンジと通常のものの三色の玉コンニャクを探していました) を求めて駆けずり回り、また、本当はカクテルグラスが綺麗だろうとこれまた駆けずり回り、結果的にあそこに落ち着いた時点で、私の中には (カメラの扱いにも慣れていないのに) 取り敢えずある程度いい感じに写真を撮るという事しか頭に無くなってしまいました。ごめんなさい。

 この回は全編アーカイブが残っていますので、こちらから (←クリックで飛びます) どうぞ。

 

 次回は2/21の19:30より「森 亮平を聴け!」第一回です。ヴァイオリンに粟津惇さん、チェロに中西哲人さんをお呼びして、私のピアノ三重奏曲第二番を中心にお送り致します。
 このお二人と私、言わば「生きるファントムトリオ」という (共演順はファントムが先です) ことになりましょう。ピットで共演させて頂いた事をきっかけに、ずっとこのお二人に自分の曲を弾いていただけたら素敵だと思っていたのが遂に叶うという非常事態です。

 生観覧をご希望の方はこちら (←相変わらずクリックで飛びます) から。お問い合わせ先は変わっておりません。今回は生で聴いて頂くのも少しお勧めしてみたいと思います。というのもピアノ三重奏曲第二番の規模がかなり大きく、生で聴き終わった後の満足感は割とあるのではないか、と思う訳です。
 もっとも、有観客前提の回が三月に控えておりますので無理は言いませんが!笑

 何はともあれ、どうぞご贔屓に!

2022年の事

 昨年応援してくださった皆々様、特にこの「エッセイ」をお読み頂いている奇特な皆様方には格別のご恩情を賜り厚く御礼を申し上げます。本年も全力で精進して参る所存ですので、どうか温かくお見守り頂けると幸いです!

 本年はミス・サイゴンを諸事情によりお断りさせて頂きましたので、(随分前からお話ししていたもののその正式回答が出たのがつい最近だった為、昨年は鬼が笑う様な話も出来ず……しかしそのおかげで) 割と自由に使える時間が多めです。年末までミュージカル指揮からは離れる事になりますが、やりたい事は山積みなので少しずつ実現して行くつもりです。

 その一環というわけではないのですが、「武蔵ホール」の配信コンサートを下払さんから引き継ぎ、私森亮平プロデュースという形で一月からほぼ毎月演奏会を行おうとしています。演奏会の形は配信なのか、通常の形態の演奏会なのか、はたまた収録したものを流すタイプのものなのか毎月考えて行こうとは思っていますが、取り敢えず一年かけてやれるだけやってみます。

 ひとまず、3月までの日程と演目は決まっておりまして、以下が詳細です。尚、情報がまとまったサイトはこちら(←クリックしてみてください)です。ご予約等はこちらから。

 

1/17(月) 19:30
亮平 Presents ライブ配信コンサート Vol.1

(出演)
Fl. 下払 桐子 Ob. 篠原 拓也 Pf. 江口 景子、森 亮平
(曲目)
グーセンス : パストラーレとアラベスク
プーランク : エレジー
亮平 : フルートとオーボエと室内オーケストラの為の協奏曲 (二台ピアノリダクション版) 完全版初演 他

【ホールにて生で演奏会をお聴きになりたいお客様は、お一人様3,000円にてホール二階席にご案内出来る準備が御座います。(最大40人程度) お席に限りがあり、万一の事があるといけませんので完全予約制とさせていただきます。お手数ですがこちらまでご連絡くださいませ。

その場合は18:4519:15の間に御入場ください。19:15以降は開演準備の為、入場はご遠慮頂いております。】
(YouTubeでの視聴はもちろん無料です。アーカイブも残す予定です)

 

2/21(月) 19:30
亮平 Presents ライブ配信コンサート Vol.2

「森亮平を聴け!」第一回

(出演)
Vn. 粟津 惇 Vc. 中西 哲人 Pf. 亮平
(曲目)
亮平 : ピアノ三重奏曲第二番 他

【こちらも1月分と同じく、ホールに直接来て頂く事も出来ます。詳細は上記に同じです。】

 

3/12(土) 時間未定ですが恐らく19時開演!?
「プーランクも聴け!」第一回

【※こちらは当日の配信はございません。詳細は追って連絡致しますが、通常の演奏会の形式でお届けしたいと考えております。】

(出演)
Vn. 迫田 圭 Vc. 細井 唯 Pf. 亮平
(曲目)
プーランク : 仮面舞踏会より抜粋
プーランク : ヴァイオリンソナタ
プーランク : チェロソナタ
フランセ : トリオ 他

 

 新年度からはさらに他の事も動かし始めますので、随時当「エッセイ」にて発信をして行ければと思っております。どうぞ御贔屓に!

 今年こそ、なるべく感覚を空けずに更新したい!!

武蔵ホールの事と、今後の登板スケジュール

 折角自分のページがありますし、よく考えてみたら(みなくても)公表しない理由がありませんのでこっそり登板スケジュールを書いておきます。公式に発表されない理由が何かしらあるのかもしれませんが、過去にごく一部の奇特な方からスケジュールを訊かれたにも関わらず「教えて良いのか分からないのでノーコメントで」とか答えてしまっていたことが心残りで。。

6/1〜3
6/13〜18
6/27〜7/1
7/5〜11
7/18〜7/26
8/4〜15
9/6〜9

 上記期間の全ての公演に乗る予定です。レミゼは今期で最後。丁寧に振らせて頂く所存です。

 

 これに乗じてもう一つ。
 明日、5/31の19:30から、若しくはその後アーカイブに残るはずなので結局いつでも観られるのですが、下払桐子さん×武蔵ホールのライブ配信シリーズ第六弾がございます。無料です。
 今回はフルート、ファゴット、ヴァイオリンのトリオということで私の出番は無いのですが、私の作品が一曲演奏されます。例によってこの編成の為の書き下ろしで初演です。大変素敵な御三方による割と普通とは言えない瞬間を孕む楽曲となっておりますが、果たしてどのようになるのでしょうか。

 私も家からタダで観ると思います。無料ですので。リアルタイムで観るかどうかは置いておいて。。笑
 この演奏会の何が良いって、電波状態が良ければいつでも何処でも観られるって所ですよね。YouTubeなので面倒な手続きも要らないしタダだし。曲毎の頭出しも簡単。聴きたい回の聴きたい曲がいつでも聴けるシステムになっております。不肖私も「中東の笛」を何度聴きに行ったか分かりません。不思議なもので、ダウンロードしてしまえば(もちろん普段から正当な手段でやってますよ)電波すら必要としないのに、割と手が届くところにあると「聴きに行けばいいや」となるもんですね。

「投げ銭ってシステムがちょっとね、、、」なーんて言って「だから観られない、もしくは観ない」みたいに仰る御仁もたまにいらっしゃいますが、努努忘れる事の無きよう。完全無料です。笑
「投げ銭」は、気が向いたら、くらいの事で、主眼は演奏を聴いて頂き、映像を見て頂く事にあります。
 こちらから「観たのに投げ銭してねえじゃねえか」とか分かるようなシステムもございませんし、中の人たちにも投げ銭目当てでやっているような方はおらず(これは一人くらい居てもいいのでは、と思わなくもない。。笑)、実は投げ銭のサイト自体もそんなガツガツしたものではありません。実に皆さんそれぞれがそれぞれの興味や趣味を原動力に、全力で楽しんでいます。
 もちろん武蔵ホールのような良質なホールが無くなってしまっては困るので、個人的には全力で応援しております。配信自体も回を重ねるごとにクオリティが上がっていて、今後どうなっていくのかが楽しみで仕方がありません。

 

 私見ですが、割と「配信」が当たり前になってきて、「客数入れられないなら配信すれば良いんじゃね」というような至極真っ当な意見があります。その通りだけど、そんな簡単な話でもなく、かと言って「直にその場でパフォーマンスに接する方が良い、演奏は現場で聴かれるべき」とも最早言い切れなくなって来ました。
 前述の「中東の笛」は、乱暴に言えばオーボエソロと伴奏、と言った形態の曲で、単純にオーボエの負担が半端ない曲です。演奏会直前まで配信のプログラムに入れるか悩んでいて、結局当初の予定では「演奏会後に映像資料として撮っておき、何らかの形で配信する」という結論に落ち着いていたのです。
 本編が終了し、下払さんと進藤さんが演奏会や投げ銭関連のお話をして終了という流れで、トークに関係ない篠原夫妻と私はホールの床に寝転んだりして演奏後の心地良い余韻に浸っていたのですが、お二人のトークが終わりに差し掛かる頃に、当の篠原氏が「中東、ここでやっちゃいません?」と私に。
 こちらとしては「篠原くんがいいならそりゃあ」だったので、結局生配信で演奏してしまったのですが、後から聞くと「やるなら今だと思った」と言うわけです。誰かに聞かれてる状態の方が集中すると言う意見には大いに賛成です。ただ、その決断が実際お客様の前での演奏会の舞台袖で成されるかと言うのは微妙でしょう?

 実は私、配信の方が緊張します。と言うと語弊がありますね、、何と言えば良いか、、配信の際の緊張は、得体が知れないと申しましょうか、本当に誰が聴いているか分からない。生の演奏会だと、少なからず自分を知ってくれている人が来てくれているので少しでも良い状態のものをというような気持ちが出るのに対し、配信はマジで誰がどういう状態で聴いているかが全く分からない。
 譜面を見ながら聴いているかもしれない、俺の事が大嫌いな人がアラ探しをしようと躍起になっているかもしれない、浜辺でアベックが雰囲気作りのために流しているかもしれない、「今このピアノを弾いてる奴が間違える毎に10万円払え」と脅されている人がいるかもしれない。脅されてる人も「ヒイイイイイイ!その『間違える』ってどのレベルまでですか!?音のミスだけじゃないとなるとそんなの不当だ!こいつが和音丸ごと間違えたら一音につき10万ということですか!?」とか言うかもしれない。ロシアの審査員は厳しいので「あーっと、ビールマンスピンに減点が付きましたね」「森はスピンからステップへの連携がおざなりになる時がありますのでフリーではその辺りも注意せねばならないでしょう」なんて言われたり。。
 大袈裟でも何でもなく、未知数の緊張感に襲われます。それが割と自分にとって悪くなく、その場の空気感で誤魔化せないことを知るという大きな気付きに繋がりました。

 それだけではありません。「配信だから出来る事」もあります。映像とのコラボレーションも可能でしょうし、生では遠目にしか見られない奏者のアップについては既に見られるようになっています。デメリットを探せばいくらでも出てくるかもしれませんが、逆も然りです。

 どんなマイナスでもプラスに変換してしまうエネルギーが満ちている下払×進藤組。この配信シリーズは世の中が元に戻っても続いていくのではないかと考えています。というか続けて欲しい。月一のペースで曲を書いていいなんて何と言う幸せ。
 そう近くない将来かも知れませんが、また気軽に演奏会を行えるような世界になってきたら一度、武蔵ホールでの演奏会に足を運んでみて欲しいのです。その時に、武蔵藤沢駅という決して便利とは言い難い駅(ホール自体は駅の目の前なので、武蔵藤沢駅まで来たらもうそこが武蔵ホールみたいなものです。ぎょうざの満州もありますよ!三割「満州」目当てでも良いです。)に来て頂く原動力となるほどの興味を持って頂く為の重要な段階です。

 でも、、もし、誰か俺に15億円寄附してくれたなら、私はあのホールをビルごと買い取ることが出来るかもしれない。
 そうしたら、ホールは5階なので階下を居住スペースにし、風呂上がりに身体を拭くのもそこそこに毎晩あの響きの中でピアノを弾くのです。

 

 風邪ひくだろうなぁ。