<収録曲>
1
Sonatine for Flute and Piano
フルートとピアノのためのソナチネ
2
Sonata for Flute and Piano
フルートとピアノのためのソナタ
1st mov. Amabile e energico
2nd mov. Romance
3rd mov. Rubato〜Giocoso
3
Trio
フルートとオーボエ、ピアノのための
トリオ
1st mov. Andante moderato
2nd mov. Allegro vivace
3rd mov. Moderato con Variazioni
4
Fanfare for Flute, Oboe and Piano
フルートとオーボエ、ピアノのための
ファンファーレ
フルート 下払桐子
オーボエ 篠原拓也
ピアノ 森亮平
レコーディング・ミックスダウン 飴屋音響
2020年1月6日〜7日
川口リリア 音楽ホールにて録音
※このCDに解説書は附属していません
<解説>
森 亮平
アンサンブルメガネが始まって以来、木管楽器とピアノの為のオリジナル作品を書く機会が飛躍的に増えました。
メガネに対しては、最初のうちはネタに走って比較的軽いタッチのもの (演奏する皆様からしたら休符も無くて本当にキツかったらしい) を書いていたのですが、やがてシリアスな作品を書きたいという意欲がどんどん湧いてきて、今ではライフワークとして取り組んでいます。
「フルートとピアノのためのソナチネ」は、今回収録した中で最も新しい曲です。
…ひとつ断っておきますが…このCDを手にしてくださったり、今ここで興味を持ってくださっている方の殆どが、私の作曲のスタイルが「前衛」とは無縁だという事を知っているであろうと勝手に思っていますが、念のため…
今この文章のBGMで流れているような音 (ページ右上のアイコンをクリック!でございます) をあまり好まない方はこの盤はお勧めできません。森 亮平は調性大好き人間でございます。
話を戻しましょう。このソナチネは今回吹いて下さった下払桐子さんに当てて書いた曲です。
個人的には作曲する時に当て書きをした方が書きやすいという事が多く、「こう書いたらこう演奏してくれるんだろうなぁ」とか「この人ならこれくらい書いても大丈夫」とか考えながら書き進めたりする事はよくあります。
先に具体例を出しましたが、そもそも書いている段階で演奏してくれる奏者様方の音が頭に鳴っているという事なのです。
普段ソナタ形式を書くときに (森 亮平はソナタ形式大好き人間でもあります) 展開部をやたら書き込んでしまう癖があるのですが、その辺もソナチネであるという事を忘れずに丁寧に書いた曲です。
その次のフルートソナタの展開部を聴いて頂ければ先程の「書き込んでしまう」という表現が分かるかもしれません。
曲を書いているうちに壮大なイメージが広がり過ぎてしまった場合にこうなります。
そもそもフルートソナタの第一、二楽章はヴァイオリンの為に書こうとしていたもので、息の長いフレーズを紡いでいくスタイルでした。
後続の楽章を書こう書こうと思いながらもかなり長い間アイデアは出ず、やがて完全に座礁していた矢先にフルートソナタとして演奏しようとなりまして (断っておきますが、ヴァイオリンソナタで『フルートでの演奏も可』とされている曲はそう多くはありませんが決して少なくもないのです。さらに今回の場合はフルート版にする際に調性も操作している為、『同じ曲』と言えるかは微妙なのです。言い訳が長くなり申し訳ありません。)
…そう、フルートソナタとして演奏しようとした時に、やっぱりこの二楽章で終わるのは些か収まりがつきませんよ、という事でいよいよ続きを書こうと奮起して、着想の段階からフルートの為に書いたのが第三楽章です。
自画自賛も甚だしいですが…こう並べるとやはり曲を書いた時期が異なるだけあって第三楽章だけ浮きますね。いい意味で。
トリオを書いたきっかけは凄く単純な事でした。この編成で演奏会を開くことになり、何かメインになる物をと思い立ったわけです。
中低音域を大いに欠く、決して書きやすいとは言えない編成なのに割とスラスラと書いた記憶があります。…第一楽章については、ですが。
このトリオは今回収録した全三楽章が揃うまでに三年くらいかかっています。
第一楽章を書き、初演した半年後くらいに第二楽章の完成および初演が行われましたが、フルートソナタ同様そこでしばらく筆が止まってしまいました。
自分の作品ながら良い流れで書けてきているものに続く楽章を書くのは、その作曲時期が書き始めから離れれば離れるほど困難になってきます。産みの苦しみと比例して困難も増してくるわけです。
(本当にブラームスの事を尊敬しているのはそういう所もあります。もっとも、、彼の場合は私とは全く別な立ち止まり方をしていたというのも存知ております。)
その結果第三楽章に於いては、ポップス等では普通の事ですが、クラシックのCDとしては (当盤のジャンル分けは「クラシック」のつもりです) 比較的異例な事にCD初演という事になります。最早「CD初演」という言葉が正しいかどうかも分かりませんが。
正に「最大級の当て書き」という事になります。なにせトリオとして全楽章録音する為に書いたようなものなのですから。
今回、解説と言いながら「途中で制作が止まった」みたいな話ばかりですが、今回演奏してくださった下払、篠原両氏に於いては共演する度に私の尻をその音で叩いて頂き、筆止まりの度に救い出してくれました。過去形にするのは良くないですね、現在でも折に触れて創作欲に火をつけてくれます。
作曲家にとって書いた作品を良いと言ってくれる奏者がいるというのがどれだけ素敵な事か。私は幸せ者です。
飴屋音響のF崎さんにも心から感謝を申し上げたいと思います。我儘かつ無茶な我々の要求を何とかしようといつも動いて頂いて、本当にありがとうございます。何故名前を伏せるのかを是非聞かせていただきたいものです。笑
また、今回ジャケットをデザインしてくださった進藤一茂さん。我々のイメージを軽々と超えた物を用意してくださり、その多岐にわたるアイデアにいつも驚かされてばかりです。
インテリアとしても一家に一枚あって良いと言えるくらいのジャケットです。観葉植物とも大変合います。その辺りも是非お楽しみ下さいませ。
中ジャケットに隠された (我々も言われるまで気付かなかった) 秘密に皆様も挑戦されては如何でしょうか!
最後に…この度のコロナ禍で気が滅入りそうな中、このCDが完成した事が幾分か心の助けになっております。
我が生涯一枚目のCDです、手前味噌ながら中々良い仕上がりだと思っております。(コロナの影響でやたら練習が捗っている今となっては、悔やまれる事も多いですが!)
是非皆様の心に一筋でも光や風や空気が差し込めば良いなぁと願いまして、ひとまず解説を締めさせて頂きます。
(※曲目解説がどうしても欲しい、というような要望がありましたら詳細はまた後日改めて書かせて頂きます。)
森 亮平