<収録曲>
1
Sonata for Oboe and Piano
オーボエとピアノのためのソナタ「碧空」
第1楽章 「回想」 Ricordo
第2楽章 「もの悲しく」 Melancolico
第3楽章 「アレグロ・ヴィヴァーチェ」 Allegro vivace
第4楽章 「自由な気分で」 Comodo
2
Trio
オーボエとオーボエダモーレと
イングリッシュホルンのためのトリオ
第一楽章 Allegretto giocoso
第二楽章 Minuetto
第三楽章 Final
3
Green Pitchy
音楽物語「みどりのピッチー」
オーボエ 篠原拓也
オーボエダモーレ 姫野徹
イングリッシュホルン 倉成麦
フルート 下払桐子
クラリネット 須東裕基
チェロ 細井唯
ピアノ 江口景子
ピアノ 森亮平
朗読 藤崎竜雅
レコーディング・ミックスダウン 飴屋音響
※このCDに解説書は附属していません
<解説>
森 亮平
今なお収束の気配が見えない未曾有の「コロナ禍」により、私も、また私の周りの人達も強制的な長期休暇を頂いた2020年春。
個人的には、音楽が生業となって初めてと言って良いほど、ちゃんと自分自身と向き合えた時間でした。
自粛となって取り敢えず久々の長いお休みだとダラダラ過ごすもほんの束の間、音楽に触れていない事の居心地の悪さが急に襲って来て、気付けばピアノに向かっていました。こう書くと格好付きますが、もちろん脚色はしておりますのでどうか誤解のなきよう。
演奏会も当然のように中止や延期となり、それに比例するように演奏機会が無い事に対する虚しさが増し、その代わりにはならないまでも何かやれる事は無いのかと考え始めて、割とすぐにCDだと思い立ちました。
もともと一枚目のCDを作り始める段階で、今後一年に一枚のペースで作って行けたらと考えていたのですが、兼ねてより「五重奏曲」と「みどりのピッチー」のちゃんとした録音をしたいと思っていた事もあり、それぞれのカップリングとして取り敢えず自粛期間を経て特に仲良くなった(と勝手に思っている)御二方に対するソナタを書こうと思い立ったのが彼等の運の尽き。
オーボエソナタを演奏してくれた篠原夫妻とチェロソナタを弾いてくれた細井氏には特に多大なご迷惑をお掛けすることと相成り、どちらのCDも、普段スケジュールを合わせるのにも苦労する各々の予定が奇跡的に白紙となっていた自粛解除から暫くした頃合いで録音されました。
CD第二弾は、第一弾でもお世話になったオーボエの篠原拓也氏を全面的にフィーチャーしたもので、オーボエソナタに始まり、数年前に篠原氏の委嘱で書かせて頂いた「オーボエとオーボエダモーレとイングリッシュホルンのためのトリオ」、そして篠原氏の台本による音楽物語「みどりのピッチー」と、まさに篠原尽くしの一枚です。「篠原氏のCD」と言って良いでしょう。
時系列的に言うと作曲時期としてはトリオが一番最初で、篠原氏の出演されたその編成での演奏会の為に書いたものなのですが、その演奏会後も折に触れて愛奏して頂いていることを聞き、さらにコロナによる「リモート」という文化の黎明期に、このトリオが謎の庭(屋外)で演奏されている様子が投稿されたりもしていたので、割と自然な流れでCD収録という流れが決まりました。
「みどりのピッチー」は、篠原氏の愛鳥(もちろん「ピッチー」という名前のツキノワインコ)を題材にお話を書いて貰い、それを朗読と音楽の為の作品としたものです。
デリケートな話題なのでここであまり内容に言及するのは避けますが、この作品は紛れもないノンフィクションです。名前もオリジナル(笑)のまま隠す事すらしない、ド直球の実話です。
そして書き下ろし、オーボエソナタはCOVID-19の影響で式が延期になってしまった篠原夫妻の為にという裏テーマがあります。自粛期間の間ずっと家で二人、楽器を演奏する毎日だというエピソードも聞いていたので、かなり張り切って書いたものです。両端楽章は特にその勢いが現れているのではないかと思います。
篠原氏の為に書く、しかもオーボエソナタとなると「ピッチー」は当然のように姿を現し、遠くのほうを飛び回ったり、ある時はフレーズのおしまいにそっと羽を寄せたり、と何度か曲中に登場します。隠れピッチー、いや隠れられてはいませんが、彼女を探してみるというのも楽しみ方の一つではないのでしょうか。
そしてピッチーはCD第五弾(ダブルリード特集)にも登場予定です。