<収録曲>
1
Sonata for Cello and Piano
チェロとピアノのためのソナタ
1. Moderato grazioso
2. Agitato
3. Quasi andante
4. Allegro vivace
2
Quintet
五重奏曲
1. Andante
2. Andante con Variazioni
3. Presto
チェロ 細井唯
フルート 下払桐子
オーボエ 篠原拓也
クラリネット 須東裕基
ピアノ 森亮平
レコーディング・ミックスダウン 飴屋音響
※このCDに解説書は附属していません
<解説>
森 亮平
三枚目に続くのはチェロソナタと五重奏曲。
チェロソナタの主題(第一楽章の冒頭主題)は、今から二年ほど前に細井氏と山手線に乗っている時に思い付き、これでソナタを書くぞと豪語しながらも、しばらくそのままになっていたもので、今回満を持してという形になりました。
割とオーボエソナタが標題的(各楽章の副題は後に付けられたものですが、基本的に大きなテーマが横たわっているという意味で標題的)だったのに対し、チェロソナタに関してはかなり絶対音楽的な書き方をされたのではないかと思っております。
普段何かと、他の方と自分を比べがちだと自覚はしていて、その為に気分が落ちたりすることも多いなか、作曲に関してはある意味で割り切れているのか、一旦流れが出来てしまえば夢中で取り組めるのです。そういう事もあって「作曲家」という看板を一応は正面に掲げてはいるのですが、チェロソナタは殊更そういう迷いや邪念の無い中で書けたと言えるでしょう。その証拠に作曲した時の事をほとんど思い出せないのです。笑
個人的にはこの第三楽章なんかは、良い意味で「どうかしてるもの」になった気がしています。
五重奏曲は、2018年に書かれた傑作です。(手前味噌ながら。)
フルート、オーボエ、クラリネット、チェロ、ピアノという、ありそうに見えて滅多に無い編成の五重奏です。いや、あるのかもしれませんが私は知りません。ご存知の方は是非こちらにご一報を。
Ensemble Mega Neのファゴットの小林佑太朗氏が大阪のオーケストラに入団することになり、そう簡単には東京に呼べないぞ、レパートリーどうする?となって書いたものと記憶しています。そもそも木管四重奏とピアノなんて曲も無かったのですがね。笑
第一楽章はソナタ形式、第二楽章は変奏曲、第三楽章はサルタレッロふうの早い楽章となっており、もうそれぞれが一気呵成に書き上げられました。本当にこの曲は早かった。
第二楽章で唯一、アイデアに詰まった箇所があったものの、気分転換に外に出たところ通りかかった近所の公園で誰かがバグパイプを練習していて(今思えば池袋の、決して練習に適しているとは言えない公園で何故、とは思いますが。あれ以来彼を見ていないし。そして「演奏」ではなく「練習」です。)、これだ!と家に飛び戻ってその後は一切滞りなく終止線まで辿り着きました。
因みに第二楽章はそれぞれの変奏にささやかなギャグを織り込んだつもりなのですが、演奏者からそれがギャグだと認識されることはありませんでした。今となっては自分でも何が何だか。
五重奏曲が初演されたのは2018年4月28日。徳島での演奏会でした。
今思えば、予定した事を予定した期日に何の躊躇いもなく行えていた頃。その辺に想いを馳せながら、ステージ上は「疎」な見た目でも、より「密」なやり取りが絶えず行われる室内楽という素敵なジャンルへの誘いでございます。
2022年春。CD第四弾「ファゴット」、第五段「ダブルリード」発売予定。