合奏の愉しみ 巴里ノ一茶音楽考

2026.1.24

 さて、「ISSA in Paris」の音楽について徒然なるままに書き連ねてみましたが、これが最終回になる事でしょう。

「振るよりも弾く方が好き」と思う時期と「弾くよりも振る方が好き」と思う期間は交互に訪れます。人間というものは無いものを強請る生き物ですから。笑

 立場上、奏者の人選もかなり任せて頂けるのです。やはり監督となれば違うなぁと思いつつも、まだまだ稽古ピアニストを始めとする割と重要な部分はどういうわけか選べなかったりする (というか先に決まっていたりする) ので、今後も向き合い続ける問題ではあるのですが、計らずも今回は私のミュージカル的音楽経験上初めて、音楽班に対する不満が皆無……どころか、何なら「皆さんに会いたい」と思えるような現場でした。
 歌唱指導のYUKAさん及び田中俊太郎さん、稽古ピアニストの中野さんに、私のホームページでの第一回のピアニストオーディションに来てくださった田端君。まずこの布陣の安心感が半端ない。私が言うのも烏滸がましいと分かった上で、それぞれがそれぞれの領域をフルに活かしたムーブをしてくださいました。

 そしてオーケストラの皆様についてもほとんど第一希望が通った形でした。
 これも私の根深い古参のファンの方がいらっしゃるとしたらご承知の通り、完全なる「当て書き」をするタイプなので「この人ならこう演奏してくれるだろう」が、かなり精密に適用できたわけです。
 そんなわけで、譜面をいつも以上に迷わずに書き進められたというのは、絶賛公演中の「ISSA in Paris」の作業にあたって、最も有難かった事です。

 

 現段階でも、そしてこれからもほとんど間違いなく、私の作曲物のうちのオーケストラ曲と室内楽曲の比率は、圧倒的に室内楽側に傾く事でしょう。
 何故曲を書いているのかって、誰かと合奏したいからです。

 ミュージカルのオーケストラは通常のクラシックのオーケストラに比べたら人数は遥かに少なく、それこそやってる事は室内楽です。(これは管弦楽であっても考え方は同じだとは思うのですが、今の私が語って良いことではありません。笑) その為、本来は室内楽……誰かと一緒に演奏するという事にあたっての素養がめちゃくちゃ必要なのです。
 これまで「アンサンブル」という単語はやたらに振りかざすのにそれが出来ていない (ように私には見える) 方や、指揮だけ眺めて演奏はそれとは全く関係ない内容を出来るという特殊な処世術を身に付けていらっしゃる方、様々な方に出会って来ました。
 それはそれで仕事のやり方としては間違っていないのかもしれない。それで良い現場もあるのでしょうし、そこまでこだわらない場合の方がきっと多いのだと思います。ただ、少なくとも私が選ぶやり方とは違う、というだけの話です。
 ただ、自分のやり方とは合わないなぁという事は音楽に限らずありますでしょう?簡単に言えば「定食を食べる時に味噌汁から手を付けるか米から手をつけるか」みたいな話でもあるのです。

 「ISSA in Paris」の譜面は特に室内楽的なアプローチが必須です。無くて良い音は元より書いていないつもりだし、我が師池辺晋一郎先生から教わった「音のレゾンデートル」を疑われるような事もしていないはず……(ケアレスミスはもちろん置いておくとして。。)
 奏者によっては嫌がる方もいるでしょう。各パートの責任がかなり重いんですもの。そんな譜面に毎日取り組んでくださって、生き生きとした演奏をしてくださる皆様に囲まれて弾く、こんなに愉しいことが他にあるでしょうか。

 心から「ダンクユーウェル」なのです。