山路さんのこと

2021.5.16

 六角精児さんについての話が途中でした。せっかくなのでもう一息。

 昔から、テレビとそこまで縁のない生活でした。「流行りの〇〇が」と言われてもピンと来ないことの方が多く、そのせいで周囲の話の輪に入れなかった、などと自分の付き合いの悪さの言い訳にも大変便利に活用させて頂いております。
 小さい頃は勉強や練習でテレビを見る事を半ば禁じられていたようなもので、それでも隠れて何とか見ようとして試行錯誤したものでした。暖かくなったブラウン管の熱や、画面の静電気? (正確に何と表現するか分かりませんが電源切った後に画面に触るとパチパチっと言うアレ) やなんかでバレて叱られる事もしばしば。
 今振り返れば高校生あたりでは「テレビが見たい!」と強く思う事は無くなったように思います。(恐らくその代わりにパソコンでDVDを観ていたと思われる)
 上京して自由にテレビが見られるようになったら今度はドリフと相棒にハマり、一日中DVD (当然ドリフは生ではありませんし、相棒はBOXでございます) を付けっぱなしで過ごしていました。もうそれは「テレビを見ている」とはとても表現出来ず、テレビはDVDと「笑点」と「ちびまる子ちゃん及びサザエさん」を録画するだけの道具になっていました。

 その後、Blu-ray内蔵型の大きなテレビを気の迷いで購入しましたが、震災発生時にしばらくNHKを付けっぱなしにしただけで、HDは笑点サザエさん笑点サザエさん笑点サザエさん笑点サザエさん笑点サザエさん (ちびまる子ちゃんは録るのを忘れていました。そして時期によってはこれに相棒が挟まります) にやがて埋め尽くされ、待機電力を食うだけの大きな置物になってしまい、その後コロナ禍の初期段階でも少し付けっぱなしましたが、やがて二台目のピアノがうちに来るタイミングで手放しました。
 結局DVDはパソコンで観られるし (そういえばBlu-rayは観られない。今気付いたけど勿体無い。観る方法は知っているけどそこまででもない) テレビを一旦離れれば次の番組の情報も電車の中吊りやネットニュースの隙間にしか入って来ないので、そもそもの興味が薄れてしまうのですね。

 何が言いたかったんでしたっけ、そう。六角精児さん。

 相棒にハマっていたので鑑識の米沢さん自体はもちろん認知はしていましたが、ラジオで「六角精児さん」という方を認識した時にはまだそこが繋がっていませんでした。つまり米沢さん=六角さんとは思っていなかったのです。当然その日のうちに知る事にはなりました。放送内でも「米沢守役の」と紹介されていたとは思うのですが、ヒトの認識というのは怖いもので聞き飛ばしてしまっていたという事になるでしょうな。(米沢さんの口調でどうぞ)

 相棒の話題でもう一つ大きな脱線もあるのですが、あくまで「読みやすい尺」を目指しているのでまた何処かで。今は六角さんです。

 例えばバンドや俳優さんや作家さん、もちろん作曲家もそうですが、誰かに「ハマる」というような状態になる時って、必ずその人の作り上げた何かに夢中になっていると思っています。
「その人の人となりにハマる」という事が本質的に起こるのは、基本的には直接会っている人に限られてくるというのが持論なのですが、私の認識の甘さが招いた幸運もあり六角精児さんに関しては「とても良い声と語り口で赤裸々に自己を語る謎の人」という出逢い方を出来たので、今でも私の六角精児さんに対する興味はそこにあります。どこまで行ってもどんな人なんだろう、と。

 直視出来ない程に緊張しながらも数日間、遠目での会釈を交わし、マスク越しにこの想い伝われ!と言わんばかりに笑顔を投げかけるも目の前のアクリル板に反射した自らの上半顔は乾燥ワカメが半乾きで何枚も張り付いてるアーモンドのようでゲンナリ。
 そうこうしているうちに六角さんから不意に「ラジオを聴いて下さっているお聞きしましたが、何のラジオを?」というお声がけが。当然細かいニュアンスの違いはありますので「六角さんはそんな物言いじゃない」という物言いはご勘弁。

 思えば、稽古場に入った瞬間から六角さんのファンである事を音楽班に撒き散らしていたのがマズかった。良かれと思ってその事を伝えてくれた事には大感謝。ただ、実はラジオを定期的にやられていた頃にはそれを聞けてなくて、今やそれを聴く手段も無く (今調べたら俺が産まれた頃には毎週火曜日にラジオをやられていたようで、、何と言えばよいか、、) 「安住紳一郎の日曜天国」にはゲストでたまに呼ばれていた回を何度も聞いた (誤解のなきよう!Podcastで何度も、何度も聴きましたコレは。笑)、というだけなので「ラジオを聴いていた」なんて表現をしちゃいけない筈だ、、などと思いながらも正直にお伝えするしかなく、舞い上がった頭で何とか日本語を捻り出して結局自分でも何を言っているか分からないような返答にに対しても大変温かい御反応。
 ストイックにお稽古に取り組んでいらっしゃる時の真剣な眼差しや、演じていらっしゃる時のアブない目とは打って変わったその御様子に、私のファン心はさらに熱くなりました。太陽の矢に貫かれた気分です。今でも益々六角さんの好印象は天井知らずに上昇中です。

 調子に乗ってエッセイ集に掲載されていたお話のその後を恐れ多くも聞いたりしてしまい、丁寧にお答え頂いたその言葉の端々に今はない物事に対する様々な「あはれ」が滲んでいて、たまらなく幸せな気分になりました。
 ジェリー藤尾のさらに詳しい話を聞いたり、「人は何で酒を飲むのでしょう」が大好きだという事をお伝えしたり、それでなくともまたお話ししてみたいのですが、もう劇場に行くとそう簡単には会えないんだろうなぁと考えると、それはそれでまた感慨深く思えてしまうこの自らの気持ち悪さ。

 人生の長さだけ取っても自分の倍近く経験されているという事を改めて認識した今でも、チャンスがあればお酒や何かでご一緒出来るような日が来ればいいのになぁと、この厳しい時代に切に思うのです。

 

 追記。

 あれやこれやしている間に劇場入りを致しまして、久しぶり (と言っても数日のはず) に六角さんを拝見しました。初めてのオケ歌合わせで自由自在に声を操る様、歌の合間に入る絶妙且つ自然な人間味、、私感動して少し泣いてしまいました。本当に格好いいんです。。
 そう思うと同時に、やはり自分のいる場所からはまだまだ遠い人なんだなぁと改めて痛感し、さらなる精進を心に決めた次第です。
 私と山路さんは果たしてご一緒できるタイミングはあるのでしょうか。