2023.5.8
ご無沙汰しております。新年度一発目の配信コンサートは、ガチ感のある演奏会の様相です。前回の「仲良くなりたい人との演奏会」で安藤さんと約束したとおり、クラリネット×ピアノ×「何か」というトリオの楽曲を軸に構成致します。
チェロの細井唯さんと一緒に、ロベルト・カーン作曲のトリオ 作品45、
ヴァイオリンの迫田圭さんとは、バルトーク・ベラ作曲の「コントラスツ」を取り上げ、それぞれの方にそれぞれトリオで取り上げる作曲家のデュオ曲を演奏して頂きます。
セットリストは以下の通りです。
ロベルト・カーン: 三つの小品 作品25 [Vc. Pf.]
I. Romanze.
II. Serenata.
III. Capriccio
ロベルト・カーン: トリオ 作品45 [Cl. Vc. Pf.]
I. Allegro.
II. Allegretto quasi Andantino.
III. Presto
シャルル・シェイヌ: ヴァイオリンとピアノの為のソナタ [Vn. Pf.]
I. Risoluto
II. Lento_Molto sostenuto
III. Allegro Giocoso
バルトーク・ベーラ: ルーマニア民族舞曲 (セーケイ・ゾルターン編) [Vn. Pf.]
バルトーク・ベーラ: コントラスツ [Cl. Vn. Pf.]
I. Moderato, ben ritmato,
II. Lento,
III. Allegro vivace,
声楽曲と室内楽(主に弦楽器)の作品を多く遺したロベルト・カーン。
晩年に「退廃音楽」としてナチス政権により演奏を禁じられてしまった為に、しばらく忘れられていたそうなのですが、近年再興の兆しが見えてきています。
このロベルト・カーン、リヒャルト・シュトラウスと活躍年代が同じなのですが、作風は実に堅牢です。ブラームスからも高く評価されていたそうですし、今回演奏するチェロの為の「三つの小品 」は割とシューマン的であったりと、かなり保守的な……と言えば聞こえは悪いですが、極めて真面目に自らの趣味を貫いた作曲家と言えるでしょう。
教育者としても有能で、ルービンシュタインやケンプといった名だたる奏者を輩出しています。「浜辺の歌」の作曲家、成田為三のドイツ時代の師匠でもあります。
そんなロベルト・カーンを、真面目クラシック枠として設定致しました。
シャルル・シェイヌという作曲家をご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。トランペットを吹かれる方々にとっては、なにせトランペット協奏曲が有名ですので、ある程度認知はされているのでは?と思います。
他の楽器の方で、シェイヌと言ってピンと来る方に私は未だ会った事がありません。(私、敢えて「シェイヌ」と書いてありますが「シェーヌ」と表記される事もあるようです。赤塚不二夫先生の顔が一瞬よぎるものですから、私は「シェイヌ」一択です)
私は幸いな事に、上京して比較的すぐのタイミングで、この「シェイヌ」という作曲家に出会う事ができました。もちろんトランペット協奏曲の伴奏でした。ナンセンスに片足を突っ込みかけているようなリズムと、エグいのに妙に抜け感のある和声、迸りまくるエネルギー、多少投げやり過ぎるのでは?と思ってしまうような大胆な筆致、どれを取っても当時の私の心を掴んで離さなかったものです。シェイヌ、デザンクロ、ジョリヴェといったその辺の作曲家は、個人的には同じ括りで今でも大変気に入っております。
当時、今回ご一緒する迫田圭氏と毎晩のように集まって、図書館で借りて来たヴァイオリンとピアノの為のデュオ作品を片っ端から初見で演奏するという、いわゆる「初見大会」を行なっていました。面白い曲や隠れた名作に出会えればいいなという思いでやっていた (のだと思う) 為に、当然シェイヌと出会ったその日に「シェイヌのヴァイオリン曲は無いものか」と探してみたらアッサリ学校の図書館にあり、初めて弾いた時から我々の爆笑を掻っ攫い、折に触れて取り上げたものでした。
折に触れて取り上げたと言っても、たまに「アレ弾こうぜ」なんて引っ張り出して来たり、私のピアノ副科の試験で (室内楽も許可されていたので) ろくに練習もせずに披露したというような体たらくで (その試験の点数は大層良かった)、ちゃんとした本番で弾いた事は結局なかったんじゃないか、というレベルです。全曲取り上げるのは今回が初めてになります。二楽章に関しては、当時一度も音を鳴らしていないんじゃないか、というくらい記憶がなく、特に三楽章に盲目的に病みつきになっていたのです。
バルトーク・ベーラの最も有名な作品と言えば、恐らく「ルーマニア民族舞曲」でしょう。元々はピアノ独奏曲ですが、セーケイ・ゾルターン編曲のヴァイオリンとピアノのデュオ版でお届け致します。タイトルではどんな曲か分からなくとも、聴けば「何ということでしょう」となる方も多いのではないでしょうか。
シメにはコントラスツ。「スウィングの王様」ベニー・グッドマンの依頼で作曲され、彼によって初演もされたこの曲。民族音楽の研究にも力を入れていたバルトークの作風を様々な側面から見られる楽曲です。