HORIZON FANTASTIQIE 〜空想の水平線〜 に寄せて

2023.11.15

 香川のホテルにチェックインする時に、毎度の如く聴こえてきたものを主要主題に置いた。その時からピアノは編成に入っていなかったので、残念ながら私はお休みなのである。実はとても参加したい楽想だったが、ピアノが入ると邪魔するのも分かっていた。そう自分に言い聞かせて来た。

 本作は四国を題材に書いた今年二作目の作品である。前作は「鳴門にて」という徳島を題材にした作品だった。直近の武蔵ホールで初演されたばかりなので是非。(この段落自体がリンクになっております。)
 我ながら、四国にいる時に出てくるモノの和声進行に随分偏りがあると感じる。それは見ている海が似ているからなのだろう。
 この間初めてオホーツク海を見た時に感じた恐れのようなものを瀬戸内海からは一切感じない。故郷徳島からも太平洋と呼ばれるべき海を見ているのではないかと言われそうだが、実際自分の中の「海」の印象と言えばまず瀬戸内海なのではないかい?と言わざるを得ない。

 高校生の時に書いた「吹奏楽の為の交響詩第一番『海へ』」というのがある。これはよく考えたらイメージしていたものは淡路島側から紀伊水道に流れ込んでいる状態の「海」だったような気がする。少なくとも陸地が左右に見えている画が見えていた。

 「空想の水平線」というどうしようもない邦題になってしまうタイトルはそこから来ているのだが、瀬戸内では水平線など見えようがない。(見えるところもあるのかもしれないが、特に香川や愛媛から瀬戸内海を見た時にはその先には割と近い所に必ず陸地がある。何といっても「内海」と言っているではないかい。)
 ただ、その海は外海に繋がっているのは間違いがない。そこを感じているからこそ私は瀬戸内の海を臨んだ時に、より水平線を感じる。

 多分、見える限り海が広がっているのが怖いだけなんだと思う。

 また、この曲の発案の際に、今回演奏する拙作「友の駆るサイドカーに揺られて」との関連性も意識した。そもそも、ヴィブラフォンと弦楽四重奏という編成の楽曲がそう頻繁に演奏されるとは思えず(もちろんして頂けるなら大歓迎ですぞ)、本当に今回の為だけに書いたと言っても過言ではない内容になっている。
 各楽器が順繰りにソロを受け持ったりする事はオープニングの奏者紹介の意味合いを持っているし、その後にフィンクやらを演奏して、また自分の曲を演奏するのだから、あまりにそれらと乖離するようでも具合が悪い。何ならメインに据えているチック・コリアとの関係すら含有する楽曲になっているはずだ。

 ただ、前述の通り邦題は自ら付けたとは言え、少しいただけない。あまりに無調の匂いがしているように感じるのだ。その為、フランス語表記が正式のものにしたいと思う。