拝啓 嘉門達夫様

2024.5.21

 嘉門達夫 (敬称略) という天才を知らないとは言わせない。「鼻から牛乳」や「小市民」「マーフィーの法則」、そして何と言っても替え歌が有名である。

 出会いは私が小学校五年生の時。ここで以前にも触れた津田先生が紹介してくれた。当時クラスの男子の間でも割と流行っていたと思う。
 クラス内でのブームが去っても事あるごとに聴き返していたし、遂にカセットテープを先生に返さなければならなくなった後は、自分で少しずつCDを買い直したものだ。

 当時はポップスをまともに聴いていなかったため、替え歌メドレーについては聴いても元が何なのか分からなかった。ただただ語感を楽しんでいたのだが、上京して以降ポップスにも積極的に触れるようになった結果、ごく最近でも「この曲替え歌メドレーのやつだ!」となる始末である。逆輸入も甚だしい。
 逆に「クラシック替え歌メドレー」は心の底から楽しんでいた。当然歌詞も流れも全て覚えているし、弾き語れと言われたら歌のレベルは置いておいて難なく出来るだろう。カルメンの「闘牛士の歌」や「ハバネラ」の替え歌なんかは今でも気づけば頻繁に口を突いて出てきてしまう。これを面白いと感じなくなるとしたらそれは恐らく私が鬼籍に入る時に違いない。

 

 昨年の川口竜也さんのリクエストライブで、谷村新司氏トリビュートのコーナーがあった為、かなりちゃんと聴き込んだ時の話。
 アリスの「チャンピオン」を聴きながらどうしても嘉門達夫の「ハンバーガーショップ」が脳裏を過ぎるのだ。そうなると、私の中では軸が「ハンバーガーショップ」になってしまい、歌い方も、挟まれる女声のコーラスの感じも「アァー」というため息混じりの合いの手も、共通点を裏付けする要素でしかなくなってしまう。何ならコード進行も似ている。(これはフォーク的には被って当然なのかもしれないが……)
 異なる点を挙げるとしたら「チャンピオン」のサビの部分に当たる箇所が「ハンバーガーショップ」には無い。それだけである。

 そんな私が最も好きな嘉門達夫作品は、紛れも無く「自転車」だ。あんなに内容の凝縮された無駄な時間は他に無い。